内田樹

作者はしばし自分がいちばん強い影響を受けた作家や
作品のことをわすれています。

そもそも忘れてしまわないと「どうしてこんな作品ができたのか
わからない」という自分自身の創造工程に対する『無知』が
失われてしまうからです。

そして『無知』に支えられない限り、人間は創造的に
なりえるはずがないのです。

自分がどうして作品を作るのか、どういう技法をつかったのか、
誰の影響を受けたのか、どの点が新しいのか、何を伝えたいのか。。。

そういうことが全部あらかじめわかっていたら、
人間は創造なんかしません。